カリー化と部分適用は、Boost Bind LibraryとBoost Function Libraryを組み合わせることで表現できる。
boost::bind()
関数で、あとから指定したい引数に、プレースホルダーと呼ばれる値を指定することで、関数の一部の引数を先に渡しておき、残りをあとから指定して呼び出す、ということができる。
#include <iostream>
#include <boost/function.hpp>
#include <boost/bind.hpp>
int add(int a, int b, int c)
{
return a + b + c;
}
int main()
{
// 第1引数のみを先に渡す
boost::function<int(int, int)> f = boost::bind(add, 2, _1, _2);
// 残りの引数を渡して関数を呼び出す
const int result = f(3, 4);
std::cout << result << std::endl;
}
実行結果:
9
_1
の指定は、「boost::bind()
によって返された関数オブジェクトの第1引数を使用する」ということを意味する。
この場合、boost::bind()
によって返された関数オブジェクトの第1引数3
を、add()
関数の_1
を指定した位置である第2引数として使用している。
カリー化は、boost::bind()
を使用して、第1引数のみを部分適用し、第2引数をプレースホルダーにすることで疑似的に表現できる。
カリー化のみを行う関数は用意されていないので、自分で作る必要がある(参考: http://ideone.com/qtXeA )。
#include <iostream>
#include <boost/function.hpp>
#include <boost/bind.hpp>
int add(int a, int b)
{
return a + b;
}
int main()
{
// add関数の第1引数に2が渡される関数オブジェクトを返し、
// その関数オブジェクトにさらに引数を渡して最終結果を得る。
const int result = boost::bind(add, 2, _1)(3);
std::cout << result << std::endl;
}
実行結果:
5
boost::bind()
は、メンバ関数ポインタも扱うことができる。
その場合、第1引数にメンバ関数ポインタ、第2引数にメンバ関数のレシーバ(そのメンバ関数を持つオブジェクト)、残りの引数としてメンバ関数の引数を指定する。
レシーバを部分適用することで、その返される関数オブジェクトを保持するクラスに、レシーバーのクラスへの依存関係を持たせることのない設計が可能となる。
#include <iostream>
#include <boost/function.hpp>
#include <boost/bind.hpp>
class A {
boost::function<void()> f_; // Bクラスには依存しない
public:
void set_func(boost::function<void()> f)
{
f_ = f;
}
void invoke()
{
f_(); // B::print()を呼び出し
}
};
class B {
public:
void print() const
{
std::cout << "B::print()" << std::endl;
}
};
int main()
{
A a;
B b;
// B::print()関数のレシーバを部分評価して他のクラスに渡す
a.set_func(boost::bind(&B::print, &b));
// 呼び出し
a.invoke();
}
実行結果:
B::print()